建築における自分の判断基準って、なんだろう
大学で、ある設計・計画系の教師に、1年生の終わり位の頃からその当時の建築の思想を諭された。
必ず、各大学に一人、二人はいる。
当時、設計課題の評価がなぜ、悪いののだろうと模索していた。好きな希望の建築学科に入ったのに。
世の中に、才能というものがあるのか。そんな時だった。
当時は、1980年代で日本の建築界はポストモダニズムの嵐が吹き荒れていた。
田舎の相模原橋本の学校で、そんな事は全く知らずに学生生活を送っていた。
四角い建物が、建築だ。カッコイイ。そんな感性、知識の田舎もんだった。
その教師の授業(計画系座学・設計)は当時のポストモダニズムの思想を反映するものだった。
建築計画の授業など、ビデオでガウディの映画や当時のポストモダニズム思想のTV番組など学生に拝聴させてい
た。敢えてコルビュジエ、ミース、カーンに触れず、ライトしか教えない、そんな雰囲気だった。
その教師の建築設計授業(必修)で留年者がケッコウ出ていた。
合わない、おかしい。彼が辞めるまで卒業できない。そんな事を建築の学生が話していた。
今は、ポストモダニズム思想というと、いろいろ批判があるが、当時は凄かった。TVでケッコウ話題にあげてい
た。
その当時、解らないまでも理論的バイブル書はチャールズ・ジェンクスのポストモダニズムの建築言語(1977
年)。
そんな事でコルビュジエ、ミース的な四角い箱はオサラバ。それが当時の日本の建築界の主流となっていた。
自分の判断基準も四角い建物はダメ。ユニーバーサルスペース(均質空間)なんてトンでもない。
そんな頭、体になっていた。
当時のポストモダニズム思想は、後に歴史主義に陥ったポストモダニズムと言うより、記号論おいて二重コード
化を問題にしていた。よく解らないが意味論、解釈論であった。、歴史主義に陥ったポストモダニズムは建築の
歴史的素養を重視しすぎて歴史主義に陥っていったと思われる(よく解らないが、勉強不足)。
自分の勝手な解釈であるが、この時のポストモダニズム思想の意味論、解釈論の2項、二つの解釈、二つの事を
同時言っている、この事にに非常に興味を覚えた。
これが自分の建築的判断基準の拠り所になっている。→意味づけ
そういう訳で、四角い建物が嫌いという価値判断を持つ人間になっていた。後にバルセロナに行き、ミースのバ
ルセロナ・パビリオンやコルビュジエのロンシャン協会に感動するのだが。構成や光の感動で違うのだが。
社会人になると、やはり四角い建物、均質空間が求められる。逆に設計側からも楽なのだ。このへん、ミース、
コルビュジエは凄い。で環境、配置構成とかに逃げる。
それから、哲学界においては
構造主義→レヴィ=ストロースの文化人類学
ポスト構造主義→脱構築、二項対立→デリダ、ドゥールズ、フーコ
ポストポスト構造主義→現代思想、多様性→メイヤース、ハーマン
に至るのだが、建築がケッコウ連動している。
今現在の建築界はかなり当時とは変わっている。→建築にできること
若い人で不動産屋や店舗(飲食店)経営などを兼業しながら建築設計事務所を経営したり、東大や京大の建築学科出て、大工などの職人の修行してから建築の設計に戻ったり、雑多である。
東大や京大などの卒業生が大手組織建築設計事務所や大手・準大手ゼネコン(設計・施工)に就職せず、アトリ
エ(有名建築家建築設計事務所),ベンチャー企業に多数就職する時代みたいである。
これは1級建築士という資格を活かし、将来1級建築設計事務所開業独立に向けてと思われる。
試験制度が変わり、大学、短大、高専、専門学校を卒業したら、実務経験なしに1級建築士試験を受験できるよ
うになり、大学院生や研究生、もちろん無職、建築関係以外の会社員も受験できるようになった。
1級建築士試験合格後、各学校卒業後の実務経験を満たせば1級建築士免許証取得となる
又、1級建築士事務所開設には管理建築士という資格が必要で1級建築士取得後、3年間の建築設計又は工事監理(別
名:設計監理)の実務経験が必要で毎月行っている講習によって取得できる。管理建築士は2級建築士時代、木造
建築士時代の管理建築士の免許でも1級建築士事務所開設できる。ただし、1級建築士免許証必須。
確か、1級建築士の合格者の属性パーセンテージは1回目の試験から変わってないような気がする。
合格者の7割が学校教育法の大学卒業者、2割が2級建築士取得者(2級建築士の資格のみで受験したもの)、0.5割
が短大、高専卒業者、0.5割が学校教育法の専修学校卒業者(通称専門学校卒業者),、全体で10割である。
職業訓練大学校、職業能力開発大学校長期課程、職業能力開発総合大学校長期課程及び総合課程、防衛大学校な
どの学校教育法で文部科学大臣が大学と同等と認めるところの卒業者は、試験申し込みのコンピューター処理
紙のマークシート欄に学校名が書いてあり、塗りつぶすことになっている。
平成21年度以降の大学土木工学科入学者には基本的に1級建築士受験資格与えておらず、一部の土木工学科のみ
試験機関が単位認定しており、受験できる。
平成20年度以前の大学土木工学科入学者には1級建築士受験資格が永遠に与えられる。
大学の土木工学科は地方国立大(静岡大、滋賀大などを除く)では各都道府県1校以上ある。逆に地方国立大の
建築学科は少ない。現在は新設されたものも多いがコース制などで純粋な建築学科は少ない。
こうした理由かもしれないが、公立大、私立大の建築学部、建築学科増設に繋がる。
この1級建築士の合格者の属性のパーセンテージだが、1次試験(学科試験)の属性のパーセンテージとほとんど変
わらない。学科試験は暗記もので大学入試や高校入試に強い人に向いている試験である。
で、2次試験(製図試験)の合格者の属性のパーセンテージであるが、上記の1級建築士合格者の属性のパーセンテ
ージと同じである。これは2次試験(製図試験)の大卒の不合格者は毎年数千人出現することになる。これを見て2
次試(製図試験)は難しんだと早合点すると痛い目にあう。
各属性の1次試験(学科試験)合格者数の半数が各属性ごとに2次試験(製図試験)に合格すると思えば、比較的楽に
合格出来るのではと思う。
1級建築士の受験資格の学歴要件は専門学校建築科以上なのだが、2級建築士(1級建築士の受験資格の学歴要件
に当てはまらない人)の1級建築士合格者の2割はかなりのパーセンテージである。2級建築士は工業高校建築科で
すぐ受験でき(ただし免許交付には2年間の実務経験必要)、又、基本は2級建築士受験の建築の学歴がない人(中
卒以上)でも7年間の実務経験があれば受験できるが、技能開発センターの中卒及び高卒コースを卒業すれば0年
で受験でき、短期間で2級建築士取得(ただし免許交付には学校により違う:1~5年間の実務経験必要)又、各種学
校・専修学校(中卒コース)でも卒業すれば0年で受験でき、短期間で2級建築士取得できる(ただし免許交付には学
校により違う:1~6年間の実務経験必要)。これが2級建築士試験における学歴となる。2級建築士試験における
受験資格が学歴での合格者すべてが工業高校卒業者でない。1級建築士試験は2級建築士免許交付後すぐに受験で
きる(ただし免許交付には4年間の実務経験必要)。
1級建築士受験の建築の学歴がない人(中卒以上)で専門学校建築科、工業高校建築科に進学しないでも1級建築
士合格者になることはできるし、実際にいる。もちろん建築学科以外の大卒・短大卒も。
資格試験といっても1級建築士試験は医師国家試験に近く、調理師、美容師の国家試験とは違う様相をなしてい
る。1級建築士試験は合格数に人数制限はあるが、2級建築士試験には人数制限なく合格ライン超えれば合格。
1級建築士免許証は国土交通大臣発行、2級建築士、木造建築士免許証は都道府県知事発行。
1級建築士試験 合格結果(過去5年)(クリック)
建築士法3条では1級建築士でなければ設計又は工事監理(一般的には設計監理と呼ぶ)できない建築物を提示
1 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーディトリアムを有しないものを除く。)又は百
貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500㎡をこえるもの
2 木造の建築物又は建築物の部分で、高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
3 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造若しくは無筋コンクリート造の建
築物又は建築物の部分で、延べ面積が300㎡、高さが13m又は軒の高さが9mをこえるもの
4 延べ面積が1.000㎡をこえ、且つ、階数が2以上の建築物
上記1~4以外に下記a.とb.が適用される。(建築基準法6条、87条→建築確認申請)
a,増築、改築等する場合→建築基準法6条の建築確認申請が適用になる場合(ほとんどは都市計画区域内だと適用)
→建物全体(既存建物を含む)に法規制かかる。
b.リノベーション、コンバージョンする場合→
建築基準法87条の用途変更確認申請において床面積が200㎡を超える特別な用途(共同住宅、保育園、学校
、旅館、寄宿舎、病院、劇場等)を変更するとき確認申請が必要になり、建物全体(既存建物を含む)に法規制
がかかる。
(例:用途が事務所の建築物を共同住宅にリノベーションする場合)
上記a.とb.において建物全体が建築士法3条に提示する1~4に該当する場合には建築士法3条が適用となり1級
建築士の資格所持者でないと設計、工事監理(設計監理)ができない。
又、これ以外に施工者向けに建設業法の1級、2級施工管理技師(建築士は建築士法)、管工事士、電気工事士など
の資格がある。
1980年代は設計事務所関係は早大のチームZoo(象設計集団など)や東大生産研原研のシーラカンス位、大企業
は電通、博報堂位で、他は変わり種はいなかった状況である。
建築に関する歴史的事件って
ポストモダニズム思想→近代建築批判。1960年代のアメリカに起こる。1920年代に起こったモダニズム建築
の1960年代の完成形に対して。アメリカの荒廃した団地の爆破。
→ペロー、ヘルツォーク、ゲーリー、ハイテク建築、隈研吾へ
1968年のパリの五月革命→学生がパリ大学を占拠し、労働者のストライキと連帯、従来の社会批判、異議申し
立て→現代建築への萌芽→機能主義批判
→チュミ、ヌーヴェルへ
モダニズム(近代建築)→19世紀までの歴史主義建築への批判、米欧の話。エコール・ボザール(パリの建築学校
:当時世界トップの建築の学校)批判、のちに解体。
→スイスミニマリズムへ
オランダ構造主義(1960~70年代)→CIAM解体後のチームXの活動原点。アイク、ヘルツベルハー、ブロムの基
本的要素の反復
→スーパーダッチ(1990年代オランダ建築):OMA,MVRDVへ
コルビュジエ→ピーター・アイゼンマン→コロンビア大学ぺーパレススタジオ
→パラメトリシズムへ
歴史的事件を通して解釈、価値判断がやはり、社会と連動している。連動しなければダメか。
でも、やはり、四角い建築は嫌いである。感覚か、DNAか。そんなことは、ないだろう。
こじつけても、四角い建築は嫌いである。